家を買うのはおトク? - 住まいのマネーABC|住まいのお金に関するお役立ち情報

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マイホーム購入を決める前に

「マンション、買ってみようかな。」今まで、マイホームなんて考えたことがない人でも、こう思う時期が来るものです。

例えばそれは、家賃6~7万円のワンルームマンションからもう少し広い部屋へ引越しをしたくなった時であったり、30代の前半で貯金が200~300万円程度に貯まった頃ではないでしょうか。

そうなると「月々家賃並みの返済額」「頭金は10万円から」といった文字が躍っている、新聞に挟まれている不動産会社のパンフレットが気になりだします。

マイホーム購入を決める前に

バブル崩壊の影響で、確かに、マイホームに手が届きやすくなりました。
地価は、90年のピーク時に比べ、現在は約80%値下がりし(東名阪の三大圏商業地)、さらに日銀の超低金利政策によって住宅ローン金利は過去最低水準になっています。

その結果、年収500万円程度、頭金が300万円程度用意できる人は、3000万円台前半の物件であればパンフレットの言葉通りに購入することができるでしょう。
3000万円台の物件というと、中古ならば、都心部でも広めの1LDKから、結婚しても不自由しない2DKの物件が市場にあふれています。

パンフレットを読めば読むほど、“家”を買いたい気持ちは強くなって いくのではないでしょうか。

しかし、家は人生最大の買い物。もう少し落ち着いて考えてみましょう。では、マイホーム購入を考え出した人に質問します。家を買うにはいくら必要だと思いますか?
「3000万円の物件なら、諸費用を7%と見積もって3200万円あれば大丈夫」――。ちょっと本気で家探しを始めた人ならこう答えるかもしれません。
しかし、この答えは残念ながら間違っています。住宅ローンで支払う利息が考慮されていません。

住宅ローンを払っていくうちに、最終的には借り入れた金額の2倍近く(!)を払うことになることを知っていましたか?では、ローン金利と支払い総額の関係を見てみましょう。

金利5%なら総支払額は2倍が目安

住宅ローンの期間は長期にわたります。住宅金融公庫であれば、返済期間は35年が基本で、他の金融機関の住宅ローンでもほぼ同じです。
もし、ローンの金利が5%なら、おおよそ支払い総額は借り入れ金額の2倍になってしまいます。

例えば3000万円借りたら、最終的に6350万円支払う計算になります。
現在、超低金利のおかげで、住宅ローン金利は10年固定で3%程度のローンを提供する金融機関も少なくありません(変動金利なら2%前後です。)しかし、日本の長期金利の水準は歴史的に見ると平均して6%程度であり、5%ローン金利 はむしろ低いほうに属します。

5%の金利でローンが払い終えられる人は、ラッキーなほうなのです。

金利5%なら総支払額は2倍が目安

もうちょっと金利の計算をしてみましょう。一部の銀行が始めた新型の住宅ローンでは、30年間固定でローン金利3%程度という画期的な商品も発売されています。
しかし、3%であっても、支払い総額は借り入れ金額の1.6倍になってしまうのです。35年を3000万円借りたら支払い総額は4850万円、利息は1600万円という計算になります。

ちょっとばかばかしいと感じませんか?よく、賃貸生活のデメリットとして言われることが多い「家賃を一生払い続けるばかばかしさ」に近いものがあると思うのですが。
(住宅金融公庫の原則的廃止が決まってから、民間の金融機関も長期の住宅ローンを競って発売するようになりました。

しかしその多くが10年固定であり、固定期間が過ぎると新しい金利を設定しなければなりません。そのときに金利が上昇していることは、十分に予想されるところです。)

デフレと金利

今の日本のように経済がデフレに陥っている場合は、ローンの金利負担は、見かけ上の数字より一段と重くなります。

金利の考え方に、「実質金利」という考え方があります。銀行の店頭などで表示されている名目金利に、物価の上昇率を加味して、実質的な金利のレベルを計ろうという考え方です。
この実質金利は名目金利から物価上昇率をマイナスすると求められます。例えば、ローン金利が3%のとき、物価上昇率が3%なら、3%-3%=0%となります。

つまり、利息が3%で借りたお金で購入した物の価値が毎年3%上昇すれば「金利負担は実質ゼロ」と考えられるということです。

デフレと金利

現在、日本の物価上昇率は、消費者物価を基準とすると、約1%強のマイナスとなっています。
統計の古さを指摘するエコノミストの間では、2%以上のマイナスが通説となっています(私たちの実感ではもっと大きなマイナスでしょう)。
物価の下落幅を2%マイナス、住宅ローンの金利を3%とすると、実質金利は、3%-(-2%)=5%となります。
現在、超低金利といわれていますが、それは名目の話であって、実質ベースでは低くはないのです。

デフレという経済現象の最大の特徴は、物価が下がることです。一方、現金の価値は、モノの値段に逆比例して上昇していきます。

現金の価値の上昇は、ローンの重みが増していくことを意味します。もし日本のデフレが、この先何年も続いたとすると、モノの値段だけではなく、私たちの所得、給料も下がる可能性が高いといえます。
(一部の企業では“賃下げ”が現実に起きています)。すると、将来的に毎月支払うローンの額は同じでも、所得が減っていれば大きな負担となってくるのです。

実質金利は5%とはいっても、実際に支払う利息が増えるわけではありません。しかし、この歴史的に見て決して低くはない実質金利の水準は、デフレ時代にローンをする負担の重さを物語っているのです。

もし、マイホーム資金を運用にまわしたら?

マイホームが欲しい、という欲望を抑えて、賃貸生活を続けることを想定してみましょう。

もし今の貯金、(マイホーム購入の頭金として考えていた)300万円を貯蓄に回したらどうでしょう。
銀行の定期預金ではたかが知れていますが、ローリスクなMMFなどの公社債投信で年3%で複利運用したとすると、35年間では約850万円にもなります(複利運用というのは単純にいうと毎年の利子を再投資すること)。

取らぬ狸の皮算用に近いですが、もし5%で運用できれば、30年ではなんと1653万円にもなります。

もし、マイホーム資金を運用にまわしたら?

さらに狭い部屋を我慢して、月々2万円を貯蓄に回すと仮定してみましょう。3%複利運用すれば30年後には約590万円、5%なら約840万円です。ここでまた質問です。

今から35年後、築35年以上のマンションか戸建住宅が残るのと、2000万円の現金が手元に残るのとでは、どちらがいいと思いますか?

よくマネー雑誌などで、持ち家と借家どっちがトクなのか?という特集が組まれます。

いろいろなシミュレーションが行われていますが、結論を単純化していうと、マイホームを購入するほうがやや費用がかかるものの、実はそれほど大きな差はありません。
賃貸生活を続ける場合は、家賃、更新料、新居に関する引越し代・敷金・礼金など、マイホーム所有者にはかからない様々なコストが発生しますし、家賃が上昇する可能性も見逃せないからです。

したがって、どっちが得なのかという質問には、前提条件が多すぎて明確には答えられませんが、どっちが人生のリスクが大きいかには、ハッキリと答えられます。

マイホームの購入には、大きなリスクが伴うのです。次は、それを明らかにしましょう。
(上記の計算のように、家にかかわる費用を貯蓄に回せば明らかに賃貸のほうがオトクです。持ち家購入者には土地やマンションの所有権が残りますが、築35年なら大きなリフォームが何回か必要になってくるでしょう。)

ライフプランの重要性

マイホーム購入のリスクを考える上でのひとつの見方を出しておきましょう。大きな買い物をするときに、自らの人生設計=ライフプランを考えておかなくてはなりません。

ライフプランの重要性

ここで、またまた質問です。子供の教育費って、いくらかかるか知っていますか?結婚する・しない、子供を作る・作らない、などを考えたことがある人でも、子供の教育費について真剣に考えた人は少ないでしょう。

もし、私立学校を中心に考えるならば、一人当たり3000万円程度かかるのです。高校まで公立で大学で私立に通ったとしても、1500万円から2000万円程度になります。

つまり、二人子供を作り大学を卒業させたとしても4000万円くらいかかってしまいます。

そうです、子供二人の教育費は新築のマンションの価格と同じくらいなのです。

よほど高収入の人や、親からの資金援助が得られる恵まれた人以外、親子4人で持ち家に住む、ということはほぼ不可能になってきているのが、今の日本の現状なのです。

多少、キツイ言い方をしてしまうと、家を買うなら子供はあきらめる、くらいの覚悟が必要です。

住宅購入のリスクは、90年頃までの地価が右肩上がりの上昇をしていた時代なら、考えなくても良かったリスクです。
しかし、他の先進国でも類を見ないデフレに見舞われている日本の状況を考えるならば、こうしたリスクは絶対に見逃せません。

一足先に低成長時代に突入した、他の先進国と同じく、ライフプランの重要性が日本でも高まっているのです。

マイホームをきっかけに人生を考え直す

これまで、マイホーム購入のネガティブな面ばかり強調してきましたが、マイホームを所有することで得られる精神的な満足感は、他では得難いものであることも事実です。

人によっては、その満足感は趣味やレジャーを大きく上回るものであるでしょう。また、親からの譲り受けた土地や援助があるなど、家を購入できる条件が揃った人も中にはいるはずです。

そんな人でも、ライフプランを考える重要性はそんなに変わらないハズです。

マイホームをきっかけに人生を考え直す

一方、マイホームをあきらめれば、人生の選択肢が広がり、生活の防衛がしやすくなるのも事実。
子供が下宿する、または結婚する、残念ながら自分の収入が減ってしまった等々。そんなことが起きた時には家賃の安いところに引っ越しをします。

余裕資金が生まれれば、広い部屋に移ったり、車を購入したり、趣味を充実させたりすればいいのです。
とすると、以前出した質問「今から35年後、築35年以上の家か2000万円、残すならどちら?」も、明らかな気がしますが…。

実は、なおも事態はそう単純ではありません。この答えは、現時点では誰にも応えることができないはずです。

もし、日本がデフレではなく、逆に今後はインフレに見舞われてしまえば、話は一変してしまいます。
地価もある程度は上昇しているかもしれませんし、35年後の3000万円が現在の300万円の価値しか(極端ですが)ないかもしれません。

景気が悪いまま、物価が上昇してしまう、スタグフレーションという最悪の経済状況になってしまう恐れもあるのです。
ここは、家を買おうと思ったのを良いキッカケとし、自分の人生を考え直してみることをオススメします。

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